2012年3月5日月曜日

『借りぐらしのアリエッティ』北米興行考

日本での興行環境に慣れ過ぎてしまって、海外、特にアメリカのジブリファン層を見誤っていたようだ。ディズニーの徹底したローカライズは、正鵠を得ていたという他にない。他国での興行と比べ、桁違いの成功である。ローカライズは、日本における『洋画』の扱いと同じであろう。


勿論、向こうのコアなファンが反発している点もよく理解できる。ポニョから本格的に始まった全米プロモートは、ディズニーの人材を使い、キャスリーン・ケネディとフランク・マーシャルという二大プロデューサーが、「スタジオジブリ作品」から「アメリカの家族向け映画」に作り変えるという、大変な労作業だったはずである。いずれにせよ、ジブリファンは字幕で楽しむことを望むだろう。


しかし、それではANIMEファンだけの伝播に留まってしまうことは明白である。広く深い歴史を持つアメリカ映画界に根付くことは、何十年かかってもいかなる傑作があっても夢物語に終わる。
移民の国である米国は、異文化の受容に寛容だとされるけれども、エンターテインメント、特に映画は例外だとはっきり言える。プロット等には、明らかに受ける定型がある。


アリエッティは、舞台を現代日本に変えたりいろいろと脚色したが、10人に満たない登場人物と箱庭的プロットで、無国籍物として通用する点があった。
何よりも、原作が国民的童話であったことが、アメリカの親たちの鑑賞動機の大きな要素である。そこに、子供や若年層に非常に強い影響力を持つディズニーTVスターを当て、そのスターそのものの跳躍台の一つとして一石二鳥を狙っている。

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